2018年2月14日水曜日

四方田犬彦編著『1968[1]文化』

1968年は今から50年前ということになる。
人類がはじめて100メートルを9秒台で走った年であり、誰ひとりとして月に降り立つ者もいなかった時代だ。ずいぶん昔のことのようにも思えるが、ついこのあいだという気もする。
今と同じように日本は平和だったが、よく考えてみると太平洋戦争の終結から20年ちょっとしか経っていない。フィリピンのジャングルには日本兵が生きていたし、まだまだ戦争の熱が冷めきっていない時代だった(それなのに冷戦の時代と言われていた)。
アメリカの若者はベトナム戦争に送り出されていた。ピーター・ポール&マリーは花をさがしていた(ヒットしたのはその数年前だけれど)。日本の若者たちは学生運動に勤しんでいた。あらゆる大学で闘争をくりかえしていた。阪神タイガースのジーン・バッキー投手と読売ジャイアンツのコーチ荒川博が甲子園球場で殴り合いを演じていた。
時代は熱かった。
60年代は否定の時代、70年代以降は肯定(否定性の否定)の時代と言われている。68年はありとあらゆる場所で反対運動が繰り広げられていた。安保闘争終結後、体制や既成概念を覆そうとするエネルギーに支えられた熱い季節が終わる。若者たちは岡林信康を歌わなくなり、結婚しようとか貧しい下宿屋からお風呂屋さんに行ったよねみたいな歌が流行りはじめる。さらに数年経って、村上春樹がデビューする。そう考えると60年代と70年代は20世紀と21世紀以上に世界が変わる。
1968〜72年。めまぐるしい変化の時代に数多くの才能があらわれては消えていった。あるいはその季節だからこそ開いた花もあったろう。忘れ去られていくものを書物というカタチで記憶にとどめる作業。それがこの本のテーマだ。
その頃、僕は小学校の高学年から中学生になりかけていた。うっすらとした記憶だけが残っている。大人になってふりかえってみるとものすごい時代に小学生をやっていたんだなと思う。

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