2018年1月24日水曜日

坂崎仁紀『ちょっとそばでも 大衆そば・立ち食いそばの系譜』

紙を仕入れて、印刷し、包装紙などに加工して販売していた父の仕事をときどき手伝うようになったのは小学生の高学年か、中学生の頃だったか。
紙を卸したり、印刷したりするのは台東区の入谷や竜泉あたり。広くいえば浅草界隈ということになる。生麺を茹でる立ち食いそば屋にはじめて行ったのはおそらくそのあたりではないかと思う(残念ながら正確に思い出すことができない)。このあいだ鶯谷や入谷を歩いて、あのとき食べた立ち食いそば屋をさがしたが、まるで見当がつかない。
立ち食いそばのそばは製麺所でつくられた茹麺を湯がいて出す店と生麺を店内で茹でる店がある(冷凍麺の店もある)が、近ごろでは店内で茹でる生麺の店が増えている。小ロットで茹でては茹でたてを提供する。普通の町のそば屋で食べるようなそばを手軽に味わえる。コシがあってうまい。
近年、チェーンで展開する立ち食いそば屋も多い。どこに行っても安定した味を楽しめるようになっている。それとは別に独立系の店も根強い人気に支えられている。立ち食いそば的には現代は素晴らしい時代であると思う。
茹でたての生麺が一般的になってきている一方で、若い頃よく食べた茹麺タイプが妙になつかしく感じられるようになった。なつかしさばかりではない。茹麺には茹麺のよさがある。たとえば生麺では太いそばにはなかなか出会えない。太ければ太いほど茹で時間がかかるので立ち食いそばというビジネスモデルにはそぐわない。コシの強さという点では生麺にはかなわないが、かき揚げなど揚げものとの相性は少しやわらかい茹麺のほうがいいような気もしている。
というわけでここのところ、時間を見つけては立ち食いそばを食べに出かける。この本は格好のガイドブックである。秋葉原や新橋には古くから続いている店が多い。もちろん入谷、竜泉、千束あたりにも人気店が多いという。
そのうち父と行ったそば屋にも再会できるのではないかと思っている。

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