2017年5月22日月曜日

関川夏央『寝台急行「昭和」行』

毎年、夏になると南房総に出かけた。
両親の実家があって、海辺の町で何日かを過ごす。子どもの頃は祖父が迎えに来て、両国駅の「下の」ホームから千倉駅に向かった。房総方面の列車の始発駅がなぜ両国だったのか、両国駅には総武線が発着する高架のホームの下にどうしてホームがあったのか、そんなことを知る由もなかった昔のことだ。
ものごころつく頃には南房総はちょっとした夏の観光スポットで内房、外房という急行列車に代わってさざなみ、わかしおという特急列車が走るようになった。そして夏の繁忙期には季節列車や臨時列車が増発された。時刻表には夏ダイヤの特設ページが設けられた。そんなわけで少なくとも年に一度は時刻表を購入していた。
時刻表から学んだことは大きい。鹿児島に川内という駅(地名)がある。時刻表をながめる習慣がなければおそらく一生「せんだい」とは読めなかったと思う(その後原子力発電所で全国的に知られるようになったのだけれど)。駅名と数字(発着時刻)の羅列が思わぬ想像力を育んだりする。たとえば日帰りで人はどこまで行って帰って来られるのかなどというシミュレーションは時刻表なしにはできない遊びだ。
鉄道趣味の世界は奥が深い。以前読んだ『汽車旅放浪記』で関川夏央の実力に恐れをなしたが、彼以前には宮脇俊三、内田百閒とそうそうたる名前が連なっている。毎年のように房総半島を列車で往き来してきたのに、小湊鉄道も木原線(いすみ鉄道)も久留里線も乗ったことがない僕なんてまだまだ初心者とも言えない。
それにしても列車に乗るって楽しい。遠くに行くのはたいへんだから、まずは近いところから乗りつぶしていきたいとずいぶん前から思ってきた。それで八高線や相模線、鶴見線、御殿場線、つくばエクスプレスに乗りに出かけた。もちろんただ乗りに行くだけの阿呆列車の旅である。そのうちもう少し足をのばして身延線、両毛線、烏山線あたりを乗りつぶそうと思っている。

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