2017年1月18日水曜日

村田沙耶香『コンビニ人間』

仕事場が築地に移ってひと月以上たつ。
広告の仕事をはじめたばかりの二十代、この地に大手広告会社があり、毎日のように通っては打合せを重ねた。ずいぶん当時とは変わってしまったところもあるし、変わらないままの場所もある。
引っ越してからしばらく当時ごはんを食べたお店をたずね歩いた。
カウンター席だけのインドカレーのお店とか、下町風情のあふれる洋食屋など。なくなってしまったお店も多い中、30年の時を隔ててまだある味に感激する。
勝どきに仕事でお世話になった方の事務所があり、よく築地市場の場内や場外にも連れて行ってもらった。そんな思い出のお店も再訪している。よくよく考えてみれば築地市場は昨年の11月豊洲に移転するはずだった。豊洲移転後の地図を貼っている店も多い。幸か不幸か築地市場はまだ築地にある。いつまであるかは明らかではないけれど、ここにあるうちに食べられるものは食べておこうと思っている。
市場場外はしばらく築地に残ると聞いてた。そういうこともあって場外ではあまりお昼を食べることはないが、時間のないときなど少し並べばラーメンや蕎麦、丼ものにありつけるのだから(もちろんそんなに安くはないけれど)ありがたいといえばありがたい。おかげでお昼をコンビニエンスストアのおにぎりやサンドイッチで済ませることもなくなった。
コンビニで働くなんて想像だにしたことがなかった。
ときどき立ち寄るコンビニで自分と同年配の方が働いていたりすると、どうしてこの人はここで働いているんだろうなどと思いめぐらせることはあるが、それほど真剣に考えたことはない。
広告制作の世界があるように、学校の先生の世界があるように、銀行マンの世界があるように、コンビニの世界があるのだ。
そこは特別な世界ではなく、特別な人が働いているわけでもなく、その世界なりの時間が流れ、その世界のことばが話されている。
ちょっと変わった人がいるかもしれないがそれは小説だからなんじゃないかな。とりあえずそう思うことにする。

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