2016年12月1日木曜日

梅田悟司『「言葉にできる」は武器になる』

近く、仕事場が移転する。
これまでは永田町、紀尾井町、麹町に囲まれた平河町という小さな町にあった。
小さな町はきらいじゃない。そこにしかない町だからだ。面積は小さくても存在が大きい。隼町という町が隣り合っている。これもまた小さい。
この界隈は昔、麹町区だった。町名としての麹町は半蔵門から四ツ谷駅あたりまで新宿通りをはさむように東西に細長い。北側は番町、さらに市ヶ谷、九段とつながる。
高校が九段にあった。
今でもときどき一番町から靖国神社に出て、飯田橋駅まで歩く。考えごとをするのにちょうどいい距離だ。デスクや打ち合わせで思いつかなかったようなアイデアがポンと思い浮かんだりすることがある。厳密にいえば、思い浮かびそうな気分になる。
さすがにもう高校時代のことは思い出さないが、母校はいつだったか東京都立から千代田区立に変わった。今まで千代田区で仕事をしてきて、賃貸料だのなんとか税だのが後輩たちに役立ってくれているんじゃないかと思うと励みになった。
こんど引っ越すところは中央区築地。昭和30年ごろの地図で見ると目の間が川になっている。というか銀座も築地も川だらけだった。タイムマシンがあればぜひ訪れたい。
築地にも小田原町という小さな町があった。今の築地6、7丁目にあたる。明石町は生き残ったのに小田原町は生き残れなかった。
広告の仕事をしていながら、近ごろ売れているコピーライターやアートディレクターのことを知らない。
この著者も知らなかった。
上智大大学院理工学研究科を終了している。根っからの理系みたいだ。理屈がちゃんとしている。組み立てがしっかりしている。
言葉が武器になるのは「内なる言葉」に耳を傾け、その解像度を高めていく。自分の思いをしっかり持つ。つまり言いたいことを磨き込んでいけば、「人が動く」(人を動かすではない)言葉は生み出される。ご丁寧に「使える型」と称して実践例まで紹介してくれている。
まさに伝わる言葉の生産技術書だ。

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