2012年2月22日水曜日

デレク・ウォール『緑の政治ガイドブック』

ツイッターで筑摩書房をフォローしている。
新刊の出る前あたりになるとあれやこれやとつぶやきはじめる。もともと興味のあるものを読み、ないものは読まないわけだから、はなから関心外のツイートは流している。それでも不思議なものでなんども取り上げられていたり、誰かのツイートにRTしていたりすると興味のないものにも興味が生まれてくる。そんなこともたまにある。
緑の政治とか緑の党なる、知らないでいれば単なるユートピアが実は20世紀後半から具体的なムーブメントとして萌芽しはじめていたことを本書で知る。先行きの見えなくなったグローバル資本主義の成熟に対し、緑の政治は経済成長本位の社会から脱却し、社会的公正を実現し、そしてあらゆる生命体と共生していくための気候変動に対する方策を具現化していく。
この本は緑の政治をめぐる地球各所での実践を網羅したまさにガイドブックだ。いわゆる概論的な内容で物足りない人には物足りない(だろう、たぶん)。とはいうものの世界の、地球の現況を憂え、しかもこの先不安をかかえたまま生きてゆかざるを得ない人びとにとってはまだかすかではあるが光明たり得る内容であるといっていい。
世界には人間の邪悪な部分がいくらでもあり、そうした邪な心が地球を滅ぼしているのではないかと思った。このガイドブックを読む限り、緑の政治を推し進める人たちは人間をあくまでも善なるものととらえているように見える。そういった人間観はなににもまして素晴らしいことだと思う反面、緑の世界を実現する上で大きな障壁として立ちはだかるのではないかと不安な気持ちにもなる。もちろんガイドブックに目を通しただけの初学者の杞憂なのかもしれない。今後さらに読み続けていきたいテーマである。
この本をひときわ魅力的にしているのは巻末に収められた鎌仲ひとみと中沢新一による対談だろう。世界各地でムーブメントとなっているこのテーマを見事に着地させている。

2012年2月13日月曜日

横関英一『続江戸の坂東京の坂』

先週JAC主催のCM上映研究会に参加した。
JACとは日本アド・コンテンツ制作社連盟の略で、テレビコマーシャルなどを制作するプロダクションから成り立っている。年に一度、テーマを決めてCMを上映する。経験豊かなプロデューサーやディレクターが進行役となり、多少のコメントを残す。
今回のテーマは「精密機器特集」で古くは1950年代のCMから最近のものまで100本弱のCMが上映された。興味深かったのは、CMそのもののアイデアとか表現手法以前にテレビを賑わせた精密機器の変遷だ。70年代まで主流だった商品は時計とカメラ、それも日本の技術の粋を集めた一眼レフカメラだ。
たとえば腕時計は当時青少年のあこがれのアイテムだった。中学や高校の入学祝いといえば万年筆か腕時計だった。カメラも当時としてはかなり高価な商品だったにもかかわらず、各メーカーがいいCMを放映した。そして時代がすすむにつれ、オートフォーカスのような高機能化や小型化がすすんでいく。
70年代後半からはコピー機や電卓が登場する。とりわけ電卓の価格破壊ぶりには目を見張る。そして80年代終わり頃から携帯電話やPCの時代となる。90年から2000年に近づくにつれ、よく見たCMが続いていく。
そんなこんなで2時間弱の上映会だったが、いいなと思ったのは76年ミノルタXEのCM。一眼レフを手に篠山紀信が語る。ワイドレンズをつけたら撮るときちょっと前に出る、望遠をつけたらカメラをしっかりかまえる…そんな話をする。写真撮影の普遍的なアドバイスを語るプロがちょっとかっこいい。
富士フィルム本社ホールを出て、笄坂を下り、大安寺の脇をまわって、北坂を上る。高樹町から表参道までちょっと遠回りしてみた。