2005年2月11日金曜日

筒井康隆『朝のガスパール』

この小説は昨年10月から、今年の3月にかけて朝日新聞に連載された新聞小説である。

冒頭はSFタッチのパソコンゲームのシーン。そしてゲームに没頭する会社役員、そして株に手を出し、借金を積み重ねるその妻。パーティーに明け暮れるその仲間たち。そして虚構を描き続ける作者櫟沢。幾重にもまたがる虚構の世界は作者が『残像…』や『夢の木坂…』で試みてきたところだ。

今回の新しい試みは読者からの投書、提案(手紙とパソコン通信)をストーリーに反映させる点にある。読者もこの虚構に実名で参加し、虚構内存在になるというわけだ。そのためストーリーはめまぐるしく、変化、進展し、いろんな場面を読みたい読者には楽しめるだろうし、文学の理論的なことも勉強になる一冊だ。
(1992.8.10)

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